胆道癌に対する抗癌剤治療

胆道とは肝臓で作られた胆汁が流れる通り道のことをいい、その部分にできた癌を胆道癌と総称します。そのため胆道癌には、胆管癌・胆のう癌・十二指腸乳頭部癌が含まれます。
さらに胆管癌はその部位に応じて、肝内胆管癌・肝門部領域胆管癌・遠位胆管癌と分けて呼ぶこともあります。これらの癌はある程度似た性質を認めるため、これまでひとまとめにして抗癌剤の治療効果が検証されてきました。

手術ができないもしくは手術後に再発をきたした胆道癌に対する標準的な初回治療は、ゲムシタビン+シスプラチン併用療法とされています。一方でわが国ではS-1という薬も広く使用されており、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法やゲムシタビン+S-1併用療法も同様の有効性が示されています。そのためこれらの治療法は、病状や体調に応じて使い分けられています。また高齢者では、ゲムシタビン単剤療法やS-1単剤療法が選択されることもあります。一方で手術ができた方においても、手術後に再発予防を目的とした抗癌剤治療(術後補助化学療法)が行われることがあり、わが国ではS-1単剤療法の有効性が報告されています。

胆道癌においても、個々の癌の特徴を踏まえた個別化治療の検討がさかんに行われています。もともと胆道癌は様々な胆道の部位をひとまとめに抗癌剤の治療効果が検証されてきましたが、最近になり個々の癌の遺伝子異常を調べ、その遺伝子異常に基づいて治療薬を選択することが少しずつ可能になってきています。治療に結びつく遺伝子異常には様々なものがありますが、ひとつひとつの遺伝子異常の頻度は残念ながら高くありません。そのため複数の遺伝子異常をまとめて検査できる遺伝子パネル検査が活用されます。さらに他の癌でも有効性が示されている免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫治療についても、その有効性を示すデータが少しずつ出てきており、今後日常臨床で使用される日が来ることが期待されています。

(注)2022年4月時点の内容になり、新しい情報が得られることで治療法が変わる可能性があるため、胆道癌診療ガイドラインなど最新の情報をご確認ください。 

質問

Q1. 抗癌剤はいつまで続けるものでしょうか?

手術後の再発予防を目的とした抗癌剤治療(術後補助化学療法)は、通常6か月間行われます。一方で手術ができないもしくは手術後に再発をきたした胆道癌に対する抗癌剤治療では、副作用が許容される状況であれば、治療効果を確認しながらできるだけ長く継続することを目指します。抗癌剤の効果がない場合、癌によって患者さんの体調が悪くなった場合、患者さんが治療中止を希望する場合は中止します。

Q2. 抗癌剤治療中はどのようなことに気を付けたらよいでしょうか?

一般的に抗癌剤を行うことで免疫力が低下し、感染症を起こしやすくなります。そのため手洗いやマスクなどの感染対策を日頃から心がける必要があります。胆道癌特有のポイントとしては、胆管が癌で閉塞してステントを入れていることも多く、そのステントが閉塞して急性胆管炎を発症することもあります。免疫力が低下した状況で胆管炎を発症すると重症化する危険があります。そのため胆管炎の症状でもある高熱が出た場合などにどのように対応すべきか、事前に担当の医師と相談しておくことをおすすめします。また抗癌剤の種類によってどのような副作用が出やすいかは異なってくるため、個々の治療で注意するポイントについても、担当の医師に確認しておくことをおすすめします。