総胆管結石の内科治療

総胆管結石は胆汁うっ滞による急性胆管炎や膵液のうっ滞による急性膵炎の原因となる可能性があり、特に炎症の程度が強い重症の場合や高齢者に対しては、早く適切な治療が行われないと死に至ることもあります。このため、急性胆管炎や急性膵炎を発症していなくても、総胆管結石と診断された場合には結石除去術を受けることをお薦めします。総胆管結石を除去する治療には、内視鏡を使った内科治療と外科的手術、経皮経肝的治療がありますが、内視鏡的総胆管結石除去術が最も身体に対する負担が小さいため、多くの施設で行われています。

内視鏡的胆管結石除去術は、総胆管の出口である十二指腸乳頭(図1)から結石を除去する治療法ですが、乳頭括約筋で胆汁の排出がコントロールされているため総胆管の出口は狭く、結石を除去するスペースがありません。このため、結石を除去する前に総胆管の出口を広げる必要があり、電気メスを使って乳頭括約筋を切開して胆管の出口を広げる方法(内視鏡的乳頭括約筋切開術:EST、図2)とバルーンを用いて胆管の出口を広げる方法(内視鏡的乳頭バルーン拡張術:EPBD、図3)の二つがあります。

<図1> 十二指腸乳頭

<図2> 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)

<図3> 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)

ESTでは切開する長さ、EPBDではバルーンの太さによって総胆管の出口の大きさを調節できますが、ESTのほうがEPBDよりも初回治療による結石除去率が高いとされています。このため、ESTが標準治療とされていますが、近年行われるようになった10mm径以上の大口径バルーンを使った内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張術(EPLBD)では、ESTと同等の結石除去率であるとされています。いずれの方法を選択するかは、総胆管結石の数や大きさ、総胆管の形状や太さ、治療を受ける方の身体の状態などによりますが、胆管の出口を大きく広げる必要のない場合や出血しやすく止血されにくい方にはEPBDが選択されます。また、ESTやEPBDだけでは除去しづらい大きな結石や総胆管内に充満するような多数の結石に対してはEPLBDが選択されますが、総胆管が細い場合では総胆管や膵臓に負荷がかかりすぎるためEPLBDは不向きとされています。

質問

Q1. 総胆管結石による急性胆管炎にはどのような症状がありますか?

急性胆管炎の症状には発熱、腹痛、黄疸(Charcot 3徴)のほか、重症急性胆管炎の徴候とされているReynolds 5徴(Charcot 3徴とショック状態、意識障害)があります。

Q2. ESTやEPBDによる合併症には何がありますか?

いずれも合併症として急性膵炎、出血、消化管穿孔などがあります。日本消化器内視鏡学会からの報告によると、EST では急性膵炎 0.6%、出血 0.4%、穿孔 0.2%、 EPBD では急性膵炎 1.0%、出血 0.06%、穿孔 0.08%の発生率とされているように、ESTでは EPBD に比べて出血が多く、急性膵炎が少ない傾向にあります。なお、EST あるいはEPBD の合併症に関連した死亡例は 0.02%前後と報告されているように、生命に係わることも稀にあります。

Q3. 治療後に総胆管結石が再発することはありますか?

数%から20%程度で総胆管結石が再発するとされており、2回以上の複数回の再発も2~3%とされています。総胆管結石の治療後でも腹痛や発熱を認めた場合には、早めに医療機関を受診することをお薦めします。

(イラストは、L&Kメディカルアートクリエイターズ株式会社に作成を依頼しました。)