内視鏡的乳頭切除術

十二指腸乳頭部は解剖学的に胆管と膵管の出口の部分に存在します。稀ではありますが、この部分に腫瘍が出来る場合があり、十二指腸乳頭部腫瘍と呼ばれます。腫瘍には、主にがんの前の段階である「十二指腸乳頭部腺腫」と「十二指腸乳頭部がん」などがあります。また、家族性大腸ポリポーシスの患者さんには十二指腸乳頭部腫瘍が出来やすいとされています。
従来、十二指腸乳頭部腫瘍に対しては外科的切除が行われてきましたが、内視鏡的治療の発達により近年では内視鏡的に切除する治療(内視鏡的乳頭切除術)が行われるようになりました。外科的切除に比べて身体に対する負担が少ないメリットがありますが、腫瘍が十二指腸や胆管・膵管などに及んでいる場合は完全な切除が困難な場合があります。そのため、治療を行う際には局部の進展度を評価し適応を決定致します。十二指腸乳頭部腺腫の多くは腫瘍が局所にとどまっていることが多いため、良い適応とされています。十二指腸乳頭部がんに対しては十分な医学的根拠が少ないため、施行に際しては担当医と慎重な相談が必要です。

内視鏡的乳頭切除術の方法ですが、専用の内視鏡を十二指腸まで挿入し、スネア(図1)を用いて腫瘍を絞扼します。その後高周波電流で切除します。切除後に腫瘍を回収し、切除した部分を観察して腫瘍が残存していないか確認します。さらに、術後胆管炎や膵炎を予防する目的でステントというチューブを留置することがあります。数日から1週間前後でステントを抜いて退院となります。


<図1>スネア
画像提供元:オリンパス株式会社

質問

Q1. 治療の前にどういう検査が必要ですか?

血液検査の他に、超音波検査、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性膵胆管造影検査など行い、広がり具合を評価します。また、病理学的検査(顕微鏡で観察する検査)のために、十二指腸乳頭部から組織を採取します。

Q2. 治療は安全でしょうか?

治療に伴う合併症として、出血・膵炎・穿孔などが起こる可能性があります。出血に対しては内視鏡的に止血可能ですが、困難な場合には血管を詰める治療を行うケースもあります。膵炎に対しては補液や抗膵酵素剤・抗生剤などの投与を行います。ほとんどが保存的に対応可能で安全に施行できます。

Q3. 治療は1回で終了でしょうか?

切除した腫瘍を病理学的に検査し、がんの合併を認めた場合には追加治療を行うか検討します。また、治療後は定期的に再発がないか内視鏡的にチェックします。再発を認めた場合、内視鏡的追加切除や専用の処置具を用いて焼灼もしくは外科的切除などを検討します。