膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症

膵・胆管合流異常は、膵液の流れる管(主膵管:図1の黄色)と胆汁の流れる管(胆管:図1の緑色)の合流する場所が“正常”より手前に形成される先天異常で、胆道拡張症は膵・胆管合流異常により、肝外や肝内の胆管が拡張する先天異常です(図1)。

図1
<正常>

<膵・胆管合流異常>
(胆管非拡張型)

<膵・胆管合流異常>
(胆管拡張型/
先天性胆道拡張症)

肝臓で作られる胆汁と膵臓で作られる膵液は、それぞれ胆管と主膵管を通り十二指腸内に排出され、口から摂取された食事を消化する役目をしています。
正常では、胆管と主膵管の合流箇所には括約筋があり膵液が胆管に逆流しないように調節されています。膵・胆管合流異常では、括約筋のないところで合流するため、膵液が胆管や胆のうに逆流し、胆管炎、胆石、胆道癌(がん)が起こりやすくなります。また、胆汁が主膵管に逆流し、膵炎を起こすこともあります。
膵・胆管合流異常には、胆管に拡張を認める場合(胆管拡張型=先天性胆道拡張症)と認めない場合(胆管非拡張型)があり、この2つの型では、合併しやすい疾患の割合が少し異なるため、その後の対応や手術方法が違ってくることもあります(図2)。

図2
膵・胆管合流異常全国登録症例でのデータ:
石橋広樹, 他. 膵・胆管合流異常と胆道癌. In 肝胆膵,2018を改変し使用

膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症では、胆道癌になる前に、膵液が総胆管に逆流しないようにする手術(胆のうと胆管を切除し、肝臓から出たところで胆管を小腸とつなぐ手術)、もしくは、胆管癌のリスクはあまり高くないと考えられる場合などでは、予防的に胆のうを取り除く手術が一般的に行われます。

質問

Q1.膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症で、胆道がんになるリスクはどれくらいですか?

膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症では、一般に20~30歳代から胆道癌のリスクがあるといわれており、年齢とともにそのリスクが増加します。先天性胆道拡張症/胆管拡張型膵・胆管合流異常での胆道癌の頻度は10~20%、非拡張型膵・胆管合流異常での胆道癌の頻度は、30%~40%と報告されており、いずれの場合も正常人に比べて大変高率といえます。

Q2.膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症は遺伝しますか?

一般的に遺伝性はないとされています。

Q3.膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症はどのような症状がありますか?

膵・胆管合流異常や先天性胆道拡張症の主な症状には、腹痛、黄疸、発熱、灰白色便、腹部にしこり(腹部腫瘤)、嘔吐などがありますが、無症状のことも多いです。

Q4.膵・胆管合流異常/先天性胆道拡張症の疑いがあると言われました。どのような検査が必要ですか?

膵・胆管合流異常や胆道拡張症の診断は、おもに、腹部超音波検査やCT検査、MRI/MRCP、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)などの画像検査で行われます。

(イラストは、L&Kメディカルアートクリエイターズ株式会社に作成を依頼しました。)