十二指腸乳頭部癌

十二指腸乳頭は十二指腸の内壁にある小さな隆起であり、そこには肝臓で作られた胆汁が流れる総胆管と膵臓で作られた膵液が流れる主膵管が開口しています。十二指腸乳頭に発生する十二指腸乳頭部がんは、胆道や膵臓の悪性疾患の中では切除率が高く、予後も比較的良好です。

早期がんではほとんど症状がなく、健診の内視鏡検査などで偶然発見されることがあります。進行がんになると、総胆管が閉塞して胆汁の流れが悪くなり、黄疸などの症状が出現します(眼球結膜が黄色くなったり、尿が濃い褐色になります)。

診断を確定するために、一般的な内視鏡検査、超音波内視鏡検査、CT検査、MRI検査などを用います。内視鏡検査で病変の一部をかじりとり(生検)、これを顕微鏡で観察して、診断を確定します。超音波内視鏡検査では、腫瘍の直接的な広がり(深達度といいます)を調べ、CT検査やMRI検査では、深達度とともにリンパ節や肝臓、肺への転移の有無を調べます。

治療の第一選択は手術です。標準的には、十二指腸とともに膵臓の右1/3にあたる膵頭部と胆管、胆嚢をまとめて切除する膵頭十二指腸切除術が選択されます。転移などがあって切除できない場合は、抗がん剤治療が行われます。

質問

Q1.放射線治療を行うことはありますか?

十二指腸乳頭部がんは十二指腸の壁にできるがんです。十二指腸は放射線に弱いため、がんを治せる量の放射線には耐えられません。そのため、十二指腸乳頭部がんに放射線治療を行うことはできません。

Q2.膵液の流れが悪くなることがありますか?

総胆管と同じように主膵管が閉塞して膵液の流れが悪くなることがあります。その場合、主膵管が拡張して太くなり、急性膵炎を起こすことがあります。膵がんでよく起こる現象なので、十二指腸乳頭部がんと膵がんを見分ける(診断する)ことが難しい場合もあります。

(イラストは、L&Kメディカルアートクリエイターズ株式会社に作成を依頼しました。)