胆管癌

質問

Q1.胆管癌(がん)の疑いがあると言われました。どのような検査が必要ですか?

胆道癌診療ガイドライン(第3版)では、最初に行うべき検査として、血液検査と体外式超音波検査をあげております。一般に血液検査では、肝・胆道系酵素と言われる項目:血清総ビリルビン値・AST・ALT・γ―GTP・ALP、腫瘍マーカー(血清CEA, 血清CA19-9値など)の上昇が手がかりとなります。また体外式超音波検査は、身体に影響を与えることなく、胆管拡張・狭窄・腫瘤像などを捉えることができるため、有用です。胆管癌は胆管に沿った広がりと、胆管周囲への広がりの2方向を示す癌であり、広がり方を詳しく調べる必要があります(図1)。

図1:癌の胆管周囲のへの広がり

この広がりを捉えるために、次に行われる検査はCT検査で、造影剤を用いて細かく撮像し、病変の広がり、他臓器・血管などとの位置関係を診断いたします。これらの検査にて胆管癌が強く疑われた場合には、MRI検査(MRCPおよび肝臓転移巣検索)、超音波内視鏡検査(EUS)、内視鏡的逆行性胆道造影検査(ERC)、PET検査などを行います。最終的な確定診断には病変組織の採取を行い、病理組織学的検査が必要となることもありますが、病変組織の採取が困難な部位に生じた場合には、画像検査のみで確定診断とすることがあります。

Q2.胆管癌と診断されました。治療法にはどのようなものがありますか?

患者さんの状態と病気の進行度によって治療法は様々なものが考えられます。遠隔転移病変や切除困難な広がりを有する方以外は、外科的切除の適応となります。胆管癌と診断される方の多くが胆管外の組織(肝動脈・門脈・神経叢・リンパ節・膵臓・肝臓など)に病気が広がった状態で発見されるため、広範囲の切除が必要となります。胆管癌は主に肝臓側の肝門部領域胆管癌と膵臓側に位置する遠位胆管癌、その両方にまたがった広範囲胆管癌があります。肝門部領域胆管癌では、肝臓に出入りする重要な脈管(胆管・動脈・門脈)が集中する部位であるため、切除には肝臓切除を要することが多く、周囲血管を癌と共に一括切除し、血管吻合を必要とする場合もあります(図2:肝左葉尾状葉切除・図3:肝右葉尾状葉切除)。これらの手術は身体に大きな負担がかかりますので、肝臓の機能が十分であることが手術を行うための条件となります。

図2:肝左葉尾状葉切除・肝外胆管切除・
肝動脈合併切除再建

図3:肝右葉尾状葉切除・肝外胆管切除

また遠位胆管癌では、主たる病変が膵臓内または膵臓に近接する部位にあること、また転移している可能性のあるリンパ節が膵周辺にあることなどから、胆管を胆嚢・十二指腸・膵臓の一部・胃の一部を一括して切除する膵頭十二指腸切除という手術が主に行われます(図4)。肝門部胆管と遠位胆管の両方に広がっている場合には肝膵同時切除の適用が考慮されますが、様々な条件を検討し、ごく限られた患者さんのみに行われます。

図4:膵頭十二指腸切除

様々な理由で、切除不能と診断された患者さんに対しての治療は、化学療法と放射線療法があります。日本においては、ゲムシタビン・S1・シスプラチンの3剤が主に用いられており、これらの薬剤(単剤または組み合わせ)を用いた治療が行われます。諸外国ではカペシタビンやオキサリプラチンも用いた治療が試みられております。またごく一部の患者さんに対しては坑PD-1抗体(ペムブロリズマブ)が適応となることもあります。
放射線治療の目的は、進行を遅らせる、痛みなどを緩和するための姑息的治療が目的となります。放射線療法と化学療法を同時に施行する方法も有効とされており、選択されることがあります。

本文は山口俊晴監修「担当医としてこのように答えたい がん患者・家族からの質問」へるす出版より引用改変した。文中の図は同本より引用している。