急性胆のう炎

胆のうは肝臓で作られる消化液のひとつである胆汁を貯蔵する袋であり、肝臓の下(おなかの右上のあたり)にあります。胆汁は主に脂肪の消化に関与しており、いったん胆のうにためられて濃縮されます。その後脂肪を含む食物が十二指腸にくると、胆のうは収縮して胆管を介してためていた胆汁を十二指腸に出して、食物の消化を促します。

この胆のうの袋が急に炎症を起こした状態を急性胆のう炎と言います。急性胆のう炎の原因の約9割は胆のう結石と言われています。一方で一般人口の約10%が胆のう結石を持っていると言われていますが、そのうち症状が出る人は年間1-3%とも報告されています。そのため胆のうに結石がある人がみんな胆のう炎になるわけではありません。ただし、脂肪分の多い食事をとると、症状が出やすくなると言われています。

急性胆のう炎になると、みぞおちから右わきにかけて痛みが出てきます。また炎症が悪くなると熱も出ます。一方で胆のうの結石によって腹痛が一時的に出て収まる場合を胆石発作ということもあります。胆のう炎では袋に炎症が起きて腫れてしまうため、症状がしばらく持続します。軽い胆のう炎では飲み薬や点滴での抗生物質による治療で治りますが、強い胆のう炎になると入院して治療を受ける必要があります。その場合には胆のうを手術で切除しないといけないこともありますが、炎症の程度や緊急度に応じて、おなかを大きく開ける開腹手術になる場合と小さな穴からカメラをおなかの中に入れて手術する腹腔鏡手術になる場合があります。手術をしない場合には、胆のうの中の胆汁を抜く処置をします。おなかの表面から超音波(エコー)で胆のうを確認して、局所麻酔下に胆のうに針を刺して胆汁を一時的吸引したり、チューブを入れて体の外に胆汁を持続的に出すこともあります。また内視鏡を使ってそのような処置をすることもあります。

急性胆のう炎は適切な治療を行うことで多くの場合治ります(死亡率1%未満)。ただし炎症が強いと胆のうの袋が破れてしまい、おなかの中に胆汁が漏れて腹膜炎になってしまうこともあります。また感染が悪化して、集中治療室での治療が必要になる場合もあります。その場合には治療に長い時間(1カ月以上)かかることもあります。そのため、急性胆のう炎と診断されたら、速やかに適切な治療を受けることがとても大切です。

質問

Q1.急性胆のう炎の疑いがあると言われました。どのような検査が必要ですか?

症状から急性胆のう炎が疑われた場合には、採血で白血球やCRPという炎症反応の数値があがっていることを確認します。画像検査としては、まず腹部超音波(エコー)検査をして、胆のうが腫れているかどうかを確認します。腫れた胆のうを押して痛みが出るかどうかも診断の助けになります。さらに造影CTなどで炎症の広がりなどを確認します。

Q2.急性胆のう炎になりましたが、手術せずに治りました。今後再発することがありますか?

これまでの報告では、約3割の方がその後に胆のう炎を再発すると報告されています。胆のう炎を何回も繰り返すと、その後の胆のうの手術が大変になることがあります。

Q3.胆のう結石がなければ急性胆のう炎になる心配はありませんか?

胆のうに結石がなくても急性胆のう炎になることがあります。原因としては、胆のうの血流が悪くなったり、菌が感染したり、胆のうが根元でねじれてしまうことがあります。また急性胆のう炎では癌(がん)が1%程度合併していることがあると言われています。